
シクラメンには毎年、個性的な新品種が登場します。花だけでなく葉の模様や形、香りなど様々な、見たことのないようなニューフェイスが店頭に並び、選ぶ楽しみがあります。中でも花弁数が増えた「八重咲き」「ダブル」と呼ばれる花型の品種は一輪の寿命が特に長いため、冬の室内でも華やかに咲く期間が長く続きます。
シクラメンの花は基本的に、針状の1本の雌しべを中心に、三角形の5本の雄しべと5枚の花弁が囲む形で、下向きに咲きます。シクラメンには以前から「八重咲き」と呼ばれるタイプの品種があり、これらの多くは雄しべの一部が不規則に花弁へと変化したもので、このため花弁数が増えてシクラメンとは思えないような花の形になるものもありました。
この中で、5本の雄しべすべてが完全に花弁へ変化すると、すっきりとした10枚の花弁を持つ「ダブル」の花になります。
シクラメンの花は、暖かな冬の室内では花粉が出やすいため受粉し、花弁が早めに脱落してしまうことがあります。これに対し「ダブル」の花には雄しべがないため花粉が出ることはなく、一輪の寿命が特に長いのです。
まだ流通量が十分ではないのでなかなか出会うことはありませんが、ダブルのシクラメンを見つけたら、この冬の楽しみとして身近に置いてはいかがでしょうか。
(文と写真:雪印種苗株式会社 研究開発本部 不破規智)