
ふきのとう(蕗の薹)はフキの花芽で、生長すると花が咲きます。「ふきのとうが生長するとフキになる」と勘違いしている人が多いようですが、フキの若葉とふきのとうは地下茎でつながっていて、フキの若葉はふきのとうから少し遅れて顔を出します。一方、ふきのとうは役目を終えると枯れて姿を消してしまうのです。
北海道ではフキは野生のものを山菜として楽しむのが一般的ですが、流通しているものには栽培品種もあり、フキは野菜のひとつであるとも言えます。
群生しているフキの一部は互いに地下茎でつながっていて、つながっているフキどうしは、一粒の種子から育った一つの株です。つまり、地上の大きな葉を支えているフキの食用部は葉柄に相当し、これらは地下茎から出た葉の一部なのです。
フキには雄株と雌株がありますので、地下茎でつながったフキは雌か雄のどちらかです。雌のふきのとうは受粉すると背を伸ばしながらタンポポに似た綿毛のある種子を作り、種子はやがて風に乗って飛んで行きます。一方、雄のふきのとうは開花後、花粉を虫に運ばせて役目を終え、姿を消します。
夏には大きな葉を広げて地面を覆うように育つフキですが、冬にはすべての葉を枯らして地上から姿を消します。その後、冬を越して早春に現れるふきのとうは日当たりのよい場所で他の植物に先駆けて花を咲かせ、花粉を運ぶ虫を集めています。フキの葉はふきのとうが役目を終えてから大きく展開して他の植物の生育を抑え、その頃にはフキの種子は風に乗って離れた場所へ運ばれていることでしょう。ふきのとうは、このようなフキの生き残り戦略を担っているのです。
(文と写真:雪印種苗株式会社 研究開発本部 不破規智)