
私たちが日本で「紅葉・黄葉」と呼ぶ秋の景色は、温帯落葉樹が持つ特有の性質によって見ることができます。今年の北海道は冬の到来が急であったため美しい紅葉・黄葉にはなりませんでしたが、温暖な地域ではこれからきれいな季節となることでしょう。
温帯落葉樹の多くは、冬を迎える前に葉を落とします(落葉)。これは厳しい冬を迎える前に落葉することによって乾燥や雪の重さから身を守るためであると考えられます。落葉する時には単純に葉を落とすのではなく、葉に残った栄養を幹へ吸収し翌春の芽吹きや開花に備えます。
生育期にはたくさんの葉緑素を持っているため葉の多くは緑色に見えますが、葉には黄色の色素カロチノイドも含まれています。秋になって気温が下がり、あるいは日が短くなり、葉緑素が分解されるとカロチノイドの色が現れて黄色の葉になります。
この時、カエデ(モミジ)のように紅葉する植物では葉に赤色の色素アントシアニンが作られます。カロチノイドもアントシアニンも、落葉前の葉から幹へと栄養を送る短い間に、葉緑素のなくなった葉を光から守る効果があると考えられます。
イチョウやカラマツなどの黄葉は比較的安定していますが、紅葉がきれいな年とそうではない年の差は大きいです。これは、赤色の色素アントシアニンがきれいに発色するためには一定の気候条件が必要なためです。
落葉前のアントシアニンは昼20~25℃、夜5~10℃程度の気温の時によくできると言われます。またこの期間に陽射しがよく当たり、乾燥や風によって葉が傷まないことも重要です。
こう考えると、穏やかな好天の続いた秋にこそ紅葉が美しくなる理由が理解できますね。
(文:雪印種苗株式会社 研究開発本部 不破規智)